銀杏


さっきプンプン怒ってた咲はすっかり息を潜めて、今は上機嫌。

買ったばかりのストラップを眺めながら、どこに着けようかと考えていた。

尊はどこに着けるのかな…。

その時ケータイが鳴った。

あ…電話。友美からだ。

「もしもし?」

『あ、咲?ごめんねー。気がつかなくって。どしたの、何かあった?』

「ううん、何でもないの。…先輩のピアノどうだった?」

『もう、すっごいよかったあ。咲も来ればよかったのに。
…で、何があったの?言ってごらん。』

友美は相変わらずお見通しだ。

「んー、尊と喧嘩した。けどちゃんと話し合ったから大丈夫。」

『そう?ならいいけど。あーうん、わかった。咲?ごめん。友だち呼んでるから。』

電話の向こうで友美を呼ぶ声がする。

「ううん、こっちこそごめん。じゃね。」

あー、失敗失敗。先に友美に電話しとくんだった。

先輩のピアノ、聴きたかったな。




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