銀杏
甘える尊
夜8時。
尊はまだ帰って来ない。
後夜祭ってこんなに遅くまでやってるのかな。それとも友だちと寄り道?北条さんちの仔犬のこと話したかったのに。
この日、尊は9時過ぎに帰って来て、咲の部屋を訪ねたのは11時だった。
咲は不貞腐れて、寝た振りをする。
コンコン…
「……。」
カチャ…
「咲?もう寝たのか?」
静かに咲の傍に来るのが気配でわかる。
顔にかかった髪をそっと払い、指先で頬に触れる。その指先がツーと顎の方へ移動して、顎の下をコチョコチョとくすぐった後、咲の上に覆い被さるように身を乗り出すと、ふーっと耳に息を吹きかけた。
顎を触られた辺りからずっと我慢してたのに、息をかけられて我慢できなくなった。