銀杏
「お前に…俺の気持ちなんか…わかるもんか。」
押し殺したような声で苦しそうに言う尊の顔は、怒りを抑えてるようにも切なそうにも見えて、何も言い返せない。
見つめ合ったまましばらくすると尊は手を放し、咲の上から下りて静かに出ていった。
一人でソファーに座りボーッとしていると、二階に上がった筈の尊はまた降りてきて玄関を出た。
こんな時間に…ランニング?
…知らない!尊のことなんか放っとこ。
無視を決め込んで一人DVDを点ける。
テレビの音だけが響いて部屋の中は静かだ。
DVDを観る時はいつも二人で観てたのに、一人で観るのは…つまらない。
主人公が喋る台詞もストーリーもちっとも頭に入らない。
目はテレビ画面を観てるのに頭の中は尊のことだらけ。
深いため息を吐き窓の側まで行くと、空を見上げた。