銀杏


「こんな時間にどこ行くの?」

突然聞こえた声にビクッとして振り返ると、玄関扉のすぐ横で、うずくまるようにしゃがんだ尊がいた。

「ずっと…そこにいたの?」

「…いや。」

「雷…鳴るかもよ。早く入れば?」



髪は少し濡れて、着ていた服も湿ってる。

「お風呂…入る?」

「…いい。」

「じゃ、早く着替えなよ。風邪引くよ。」

「……。」

尊が部屋に入るのを確認して咲も部屋に戻る。

その時だった。

最初、遠くで鳴っていた雷はいつの間にかすぐ近くに迫っていて、急に辺りが明るくなったかと思うと、地響きがする程の大きな音を立てた。

ひっ!

あまりの雷鳴に耳を塞ぐと同時にバンッ!!と扉が開いて、尊が飛び込んできた。




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