銀杏


目が覚めて時計を見るとまだ6時で、夕べ尊の胸に顔を埋めて寝たのを思い出した。

照れ臭い。

尊はまだ起きてない。
…一緒に眠ったのは何年ぶりだろう。確か、尊のおじいちゃんが入院した時以来だ。
やっぱりあの時も雷が鳴って…。

ふふ…何にも変わってない。寝顔もあの時のまま。
まだ少年っぽさが残る顔にはうっすら髭が生えてる。
長い睫毛に高い鼻、綺麗な形の唇…。指先でそっと触れてみた。

この唇が二回も頬にキスしてくれたんだ…。

いきなりパクンと指をくわえられた。

「ひゃっ!た…尊…起きてたの?」

「今起きた。」

「び…びっくりするじゃない。指食べないで。」

慌てて手を引っ込めた。



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