銀杏


「…誰も教えないのに、生まれてすぐにおっぱいの吸い方を知ってる。これは人も同じで本能なんだろうね。」

――本能。
人や動物が生まれながらに持っている性質や能力。

何か…凄い。

おっぱいだと思って、ちゅっちゅっと吸う仔犬。

「ごめんね。これはおっぱいじゃないんだよ。」

可哀想になってハナちゃんの元へ返した。



その時、テラスの硝子戸が開いて声をかけられた。

「貴士、お客様なの?入っていただいたら?」

北条さんに促されついて行った。

広い庭だと思っていたけど、家の中も広い。

玄関だけでも一部屋できるんじゃないかと思ってしまう。
そこは吹き抜けになっていて、二階の窓から明るい光が降り注ぐ。




< 297 / 777 >

この作品をシェア

pagetop