銀杏
「…誰も教えないのに、生まれてすぐにおっぱいの吸い方を知ってる。これは人も同じで本能なんだろうね。」
――本能。
人や動物が生まれながらに持っている性質や能力。
何か…凄い。
おっぱいだと思って、ちゅっちゅっと吸う仔犬。
「ごめんね。これはおっぱいじゃないんだよ。」
可哀想になってハナちゃんの元へ返した。
その時、テラスの硝子戸が開いて声をかけられた。
「貴士、お客様なの?入っていただいたら?」
北条さんに促されついて行った。
広い庭だと思っていたけど、家の中も広い。
玄関だけでも一部屋できるんじゃないかと思ってしまう。
そこは吹き抜けになっていて、二階の窓から明るい光が降り注ぐ。