銀杏
お礼を言って玄関を出ると、北条さんはバイクで送ると言ってくれたけど、一人で帰りたいと告げて駅の方へ向かった。
一文字雪乃。
おばさんから聞いたお手伝いさんの名前。
お母さんの名前だ。
じゃあ、お母さんは私が生まれる前は、あの家でお手伝いさんをしてたの?
おばちゃんはこのこと知ってるのかな。
早く帰って確かめたい…!
はやる気持ちからいつの間にか足は速くなって、頭の中はお母さんのことでいっぱいだった。
「おい!」
突然腕を掴まれてビクッとした。
「え…あ、尊。おかえり。」
我に返って辺りを見ると、駅前はたくさんの人が行き交い、そこから見えるホームの時計は午後5時を指してる。