銀杏


お礼を言って玄関を出ると、北条さんはバイクで送ると言ってくれたけど、一人で帰りたいと告げて駅の方へ向かった。



一文字雪乃。

おばさんから聞いたお手伝いさんの名前。

お母さんの名前だ。

じゃあ、お母さんは私が生まれる前は、あの家でお手伝いさんをしてたの?

おばちゃんはこのこと知ってるのかな。

早く帰って確かめたい…!



はやる気持ちからいつの間にか足は速くなって、頭の中はお母さんのことでいっぱいだった。

「おい!」

突然腕を掴まれてビクッとした。

「え…あ、尊。おかえり。」

我に返って辺りを見ると、駅前はたくさんの人が行き交い、そこから見えるホームの時計は午後5時を指してる。




< 301 / 777 >

この作品をシェア

pagetop