銀杏
「ただいま。」
おばちゃんは夕飯の用意を始めたところだった。
「おばちゃん、手伝うからちょっと待ってて。」
手伝いながら話を切り出そうと思って、エプロンをつけて下へ降りた。
おばちゃんはお鍋で出汁を取っている間に野菜を切って、天ぷら鍋を火にかける。
咲はその横でキャベツの葉をちぎりながらタイミングを見計らっていた。
一段落したところで話を切り出した。
「おばちゃんが知ってるお母さんってどんな人だった?」
「どうしたの、突然?いつも言ってる通り、優しくて…。」
「そうじゃなくて、私が知らないこと…ある?」
「咲ちゃんが知らないようなこと…例えばどんな?」
「私が生まれる前の話。どこで働いてたのかとか…。」