銀杏


「……私が知ってるのは、ほとんど咲ちゃんが保育所に通ってた頃のことだからねえ。
うーん…。
一度だけ聞いたのは、独身の時に住み込みで働いてたってことだけかな。
どんな仕事だとか、そんなことは話さなかったよ。
…何で知りたくなったの?」

「……今日、北条さんちに行った時聞いたの。昔、住み込みのお手伝いさんがいて、その人が一文字雪乃って名前だって。私が一文字だから知らないかって…。」

「…え?」

「私…お母さんのこと知りたい。おばちゃんが知ってるのは本当にそれだけなの?」

咲の必死な様子に心を痛めながらも、おばちゃんは首を縦に振る。




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