銀杏


「それで帰ってからずっと顔色が冴えなかったんだね。
ごめんね。もっといっぱい知ってたらよかったんだけど。
あまり自分の話はしたがらない人で、人の話をにこにこと聞くばっかりだった。
咲ちゃんのお父さんのことも、事情があって結婚できなかったけど、大好きな人の子どもの咲ちゃんがいるから頑張れるって言ってたよ。」

大好きな人の…子ども。

それを聞いて涙が溢れた。

「本当?本当にそう言ったの?…お母さんは私を大事にしてくれたけれど、お父さんの名前はわかんないし、認知をしてもらった訳でもなくて…。私…望まれない子だったのかもってずっと思ってた。お父さんにとってはいらない子だったらどうしようって…。」

「もっと早くに言うべきだったね。ごめんね。ごめんね…。」

おばちゃんは優しく咲を抱き締め、何度も謝った。




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