銀杏
机に肘をつき、窓の外の桜の木に目をやった。
春は綺麗だったなあ。
風に乗って花びらが机の上に落ちてきて。
これから始まる高校生活に胸膨らませて…。
それに比べて今は寒々と枝を伸ばすだけの木。
ただじっと春を待つだけ。
動くことができずにいる私と一緒だよ。
…そういえば銀杏はもう綺麗に色づいてる頃だ。
この冬はまだ銀杏並木に行ってない。
今日帰りに行ってみようかな。
クラブを終えた時には辺りはすでに暗く、それでも銀杏並木は道路を照らす街灯で黄色く浮かび上がる。
冷たい風がザワザワと葉音を鳴らし、その音と共にカサカサと日だまりのような葉が落ちていく。
また、手袋忘れた。
冷たくなった手を擦り合わせて、ハアーと息を吹きかける。
冷え性のくせにすぐ忘れるから、いつも尊に怒られる。