銀杏

足跡



12月初め。

北条さんから連絡があった。仔犬たちが土曜日にもらわれていくから、もう一度見においで、と。

ずっとおばさんに話を訊いてみたいと思っていたから二つ返事でOKした。

その日はお昼過ぎに出かけ、北条さんちへ行く前に銀杏並木へ向かった。

お母さんの話を聞く勇気が欲しい。

お母さんの名前は一文字雪乃だと言ってもいいよね?

お父さんのことも何かわかるかもしれない。

私を…守って…!

銀杏の葉はもう随分散って、靴が葉に埋もれてしまいそうだ。その中から幾分綺麗な葉を一枚拾い上げると、手帳にそっと挟んだ。




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