銀杏
「あ~あ、これからはもっと寒くなるのか。やだなあ。」
それまでの静かな空間から早く抜け出したくて、気を紛らわすためにそんな言葉を口にした。
「冬は嫌い?」
優しい笑顔で咲の顔を覗き込む。
「大っ嫌い。朝は布団から出れないし、水は冷たいし、炬燵に入ったらもう動けない。」
「ははっ。随分苦手なんだな。」
「北条さんは?冬が好きなんですか?」
「うん。スキーとかできるし。」
「スキーかあ。私、やったことないんですよね。一度はやってみたいと思ってるんですけど、なかなか機会がなくて。」
「へえ、そっか。じゃあ、この冬行ってみる?近場だと日帰りで行けるよ。」
「…ホントに?」
「うん。」
北条さんの優しい笑顔につられるように「行きます!」と返事をした。