銀杏


昨日の夜、あんなにあれこれ考えて用意したのに、結局おしゃれなんて何一つできず、家を出ることになった。

しょぼーんと項垂れて、トボトボと尊の後ろを歩く。

駅に着くまでに尊は何度も咲を振り返る。

その度に短いため息が聞こえてきて、更に落ち込んだ。

「……。」

「……。」

家を出てからずっと無言で、何も喋らない尊が怖い!

またお仕置きと称して意地悪されるんだろうかと、ドキドキしていた。

と突然――

「だ――っ!もう、鬱陶しい!!」

いきなり叫ぶと咲の手首を掴み、大股でグイグイ引っ張って行く。

え…え?何?もしかして尊の怒り爆発!?
嫌――っ!
それだけは勘弁!!

半泣き状態で尊に引きずられるように強制連行された。




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