銀杏


駅の改札に向かう階段の手前、線路脇のフェンスを背中にした咲の前に、尊は立ち塞がる。

ビクビクと体を小さくして俯く咲の両脇に手を着いてフェンスを掴む尊は、まるでネズミを追い詰めた猫の様。

じっと鋭い視線で睨まれて、とてもじゃないけど目なんか合わせられない。

正月早々寝坊して怒られるなんてついてない。
尊ってば、怒ると半端なく怖いんだもん。
しかも今回はどう考えても私が悪い。

でも…でも寝坊したのだって、尊のためにおしゃれしようとして悩んだからであって、尊にだって少しは責任ある…と思う。

自分を正当化するために変な言い訳を考えていると、

「いい加減にしろよ…。」

尊は呆れたような口調でため息混じりに呟いた。




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