銀杏
悩める乙女
去年の秋。
新人戦で優勝した尊は時の人となり、注目されるようになっていた。
あるテニス雑誌の〈今月の注目選手〉という小さな記事に取り上げられ、顔写真が載ったんだ。
これはクラスの子たちが雑誌を見ながら話しているのを聞いて、本屋さんで立ち読みをして知った。
友美と久しぶりに会ってこの話題が出た。
「書いてるの嘘ばっか。」
「え、嘘?」
「180センチの身長とか、靴のサイズとか、足の長さなんていつ計ったっていうのよ。それに何てったって“イケメン”てとこ。」
「何でえ?イケメンだと思うけど。」
「普段の尊を知らないからそんなこと言えるんだ。起き抜けの格好見たらきっと幻滅するよ。ボサボサ頭で大欠伸しながらパジャマのズボンに片手突っ込んで…ああ、もう止めた。うんざりしてきた。大体テニスに関係ないじゃん、こんなの。アイドルじゃあるまいし。」
「…あのさ~、咲。」
「ん~?」