銀杏


「その人のためなら背中を押すのが当たり前だろ。」

「じゃあ、逆の立場でその人を置いて行くことになったら?」

「…やっぱり行くだろ。それがどうした?」

「……辛くはないの?」

「そんなわけないじゃん。でも長い目で見て自分の人生なんて、どこにチャンスが転がってるのかわかんないだろ?俺だったらそれを無駄にはしたくない。」

「じゃあ残された彼女には何て言うの?」

「さあな。」

「待ってて欲しいとか言わないの?」

「言わない。何年も放ったらかしになるなら。その時は真剣に想ってても、何年も先の保証なんてできない。そんなので縛りたくない。赤い糸なんていうものがあるなら、きっといつかまた巡り会える。」

「……」




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