銀杏


驚いた。

尊が真剣に答えてくれるなんて思わなかった。
しかも赤い糸だなんて…。
尊ってロマンチスト?

うふ…ふふふ…

「お前、キモい。」

ぶふっ

「何が可笑しいんだよ!」

「だってえ。尊が…赤い糸…うひゃひゃ…。」

まさかそんなことを考えてるとは思わなかった。
真っ赤になって怒る尊が面白い。更に笑いが加速する。すると――

びろ~んと頬を引っ張られて笑いの代わりに涙が出た。



「友美ちゃんも寂しくなるな。」

「うん。8月には向こうへ行っちゃうから、それまでに何ができるか考えようって。」

「そうか。」

友美も寂しいだろうけど私も寂しい。中学のあの時以来、まだピアノを聴かせてもらってない。お互いの都合が合わなくて延び延びになってる。




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