銀杏
雪乃と博貴
尊には根を詰め過ぎだなんて言われたけど、やっと話ができるようになってきたのに、行けないなんて言えない。
お兄さんが待っててくれるかも…て思うと行かずにはいられなかった。
今日は部屋をノックすると、「入れ」とすぐに返事がきた。
優しい声で、「よう。来たか。」と受け入れてくれる。
「この間は悪かったな。きつい言い方をして。」
あれ…謝るってことはわざと言った?
「ううん。私の方こそ気に障ること言ったのかと思って…ごめんなさい。」
「いや…。」
カーテンを揺らす風が心地いい。この前と同じ椅子に腰掛けて正面から風を受ける。
髪がなびく。
この間と違って、博貴は咲の斜め前に座っている。ちゃんと咲の顔が見える位置。
博貴は椅子の端に肘を乗せ、頬杖をついた。優しい瞳が咲を捉える。