銀杏
博貴の手を取ると反対に手首を掴まれた。
「その前に…」
「?」
「どういう理由でこの家に出入りしている?」
「……お母さんのことが知りたかったから。」
「本当にそれだけか?なら去年から来ていて、もう十分に聞いたんじゃないのか。…他に何がある?何を知りたいんだ?」
「だってお兄さんはおばさんたちが知らないお母さんを知ってるから…。
それにここに来るのに理由がいるの?お母さんが愛した人たちを私も愛してる。だから…。」
探るような目付きでじっと見られて視線を逸らした。
今言ったことは嘘じゃない。本当にみんなのことが好きだから…。でももう一つの理由を言うとお兄さんを傷つけるかもしれない。
今やっと色んな話を聞いたばかりでそんなこと言えない。