銀杏


左手に視線を移すと、ブランコが寂しげにじっとしているのが目にとまる。

山から滑り台を滑ってブランコの前まで来た。

ブランコなんて何年ぶり?懐かしい。

キィー…キィー…

尊と競争したっけ。
靴飛ばししたり、飛び降りたり、どちらが早く高く漕げるか…。

ああ、そうだ。
お母さんに叱られたんだ。危ないから止めなさいって。
んー?あれ、お母さんだったかな。おばちゃんだっけ?

あんまりよく覚えてないや…。

何で忘れちゃうんだろう。
忘れたくないのに。
反対に忘れたいことはいつまでも鮮明に思い出す。

未だに通ることができないカドヤの前。

高校に入ってからは一人で留守番なんてすることがないから、以前のように発作を起こすかどうかわからない。

何だかちっとも成長してないな、私って。

その点、尊は前より幾分男らしくなった気がする。
クラブでも学年リーダーだし、……モテてるみたいだし?




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