銀杏


小さくため息を吐いて、「お兄さん…どうしよう。」と呟いた。

ブランコを止めてじっと足元を見つめた。

誰かが近づく気配を感じる。途端に我に返った。

今、何時だっけ?
公園の中には誰もいなかった。ということは私一人。声を出したところで誰かに助けてもらえそうな可能性は少ない。

急に怖くなってきた。背筋がぶるっとくる。

早く帰らなきゃ!

ガシャン!

慌てて立ち上がり、公園の出入口に向かう。でもその時、

「一文字!」

声がして振り向くとそこには福田くんがいた。

「…福田くん…だったんだ…。」

ホッとして安堵の息を吐く。

「どうしたんだよ、こんな時間に?」

「う…うん、ちょっとね。」

「…もしかしてタカさんとこからの帰り?送ってもらわなかったのかよ。」

「北条さんちを出た時はまだ明るくて6時頃だったから…。」

「6時ー!?今何時だと思ってんの。もう8時になるぞ。」




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