銀杏


え?……嘘…嘘でしょう?

「か、帰んなきゃ。大変!」

尊の仁王立ちの姿が目に浮かぶ。

尊ってある意味、おじちゃんやおばちゃんより怖かったりするんだもん。

「じ…じゃあね、福田くん!」

挨拶もそこそこにその場を離れようとした時だった。

視線を感じてそちらに目を向けると、コワ~イ顔をした尊がじっと睨んでる。

……時、既に遅し…

ずーんと落ち込んで尊のところへ行こうとすると、福田くんに手首を掴まれた。

「待てって。送るよ。」

「え?でも、あの…い…いいよ。」

「よくない。真っ暗じゃん。何かあったらどうすんだよ?」

「あ…あ、あの!」

自転車の後ろに乗るように指示されて、オロオロしているといつの間に来たのか、尊がすぐ側にいた。

「何もたもたしてんの?早く来いよ。」

福田くんに掴まれた方とは反対の手を尊が掴んだ。




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