銀杏
「え…えと…えと…い、今!たった今会ったの。送るって言ってくれて…。」
尊への言い訳を必死になって考える。
「…あそ。俺が来たんだからもういいじゃん。行くぞ。」
掴まれた手をぐいっと引かれてバランスを崩した拍子に、ポスッと尊の胸の内に収まった。
そのまま尊は咲の肩を抱き、歩きだそうとする。
福田くんが気になって振り返ると、怖い顔をして睨んでる。
「おい!待てよ。」
それは咲に向けられた言葉ではなく、視線の先は尊だった。
彼の言葉を無視して帰ろうとする尊の服の裾を掴んで、クイクイと引っ張る。
それも無視して歩みを止めない尊の肩を福田くんは掴んだ。
「待てって言ってんだろ!?」
やっと振り返って、「何?」と言葉少なに答えた。
「俺が送る。」
「はあ?同じ家に帰るのに何でいちいち送るの。バカじゃねえの?」
「彼女に話がある。だからあんたは先に帰れよ。話が済んだらちゃんと送り届ける。」