銀杏
「…咲、何言ってんの、こいつ。」
「私に話があるみたい。…あの、福田くん。明日じゃダメかな。今日はもう遅いし…」
「一文字は黙ってて。」
二人の間にピリピリとした空気が漂う。
二人の顔を交互に見てハラハラする。
何でこんなことになるの?今まで顔合わしたのって数えるほどしかないじゃない。
「家族だか何だか知らないけど、肩まで抱いておかしくね?」
「は?」
「血の繋がった兄妹でも、高校生になってまでそんなことしないんじゃない?」
「あいにくうちは仲がいいんだよ。…何が言いたい。俺が羨ましいのかよ?」
この言葉に余計にムッとした表情が窺えた。
尊の挑発とも取れる言い草に咲もカチンときた。
「喧嘩売ってどうすんの!?
そんなに福田くんのことが気に入らない?親切で送るって言ってくれただけでしょう?もうやめてよ。
福田くん、ごめんね。ちゃんと明日話聞くから。今日はこのまま帰るよ。またね!
…ほら尊、いつまでにらめっこしてるの。早く帰ろ。」
尊の腕を無理やり引っ張って行った。