銀杏


「…じゃあ、ぎゅってして。私が不安にならないように。」

「いいよ。クッション下ろして起きろよ。」

クッションを取ろうと引っ張られても、手を緩められない。恥ずかしさが込み上げてきて…顔を見られたくない。

「…おい、離せよ。」

「……無理。」

「は?もうハグはいいのかよ。」

「…して。」

「こんなの抱いてちゃできないだろ。離せ。」

「……」

尊が移動するのがわかる。

呆れた?怒った?部屋から出ちゃった?

そぉ~っと目だけを出して辺りを見る。

あ、あれ?いないや。
やっぱり呆れて出て行ったんだ。

バカな咲。素直になれって言われたとこだったのに。

起き上がってクッションを手離した。

途端に後ろからハグされた。

「きゃっ!いたの!?出て行ったかと思った。」

「ここんとこしばらくハグしてなかったな。」

「うん。」




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