銀杏


「頼む…て。お願いするって言ってよ。…あのね、…やっぱりいいや。人に喋ると叶わなくなったら困るもん。」

「…ふーん。じゃあ、俺も一緒に頼んでやるから教えろ。」

「えー?……。いくら願っても叶わないから…いいよ。」

「そんな無理な頼みだったら言っても言わなくても一緒じゃん。」

「そうだけど…。」

「ほら、言えって。」

「……。」

「……。」

尊の言う通り、叶わない願いなら言っても言わなくても同じだ。それなら思いきって言ってしまおうか。

「あの…ね。笑わないでね。」

「うん。」

「お母さんの声が聞きたい。」

「……。」

「お母さんの顔は写真があるからいつでも思い出せるけど、声がね思い出せないの。」

「……。」




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