銀杏
「今年もメドレーになったじゃん。俺もメドレーだし、一文字に負けてらんないな。」
「福田くんは男なんだから私より速いじゃない。」
「そういう意味じゃなくて、一つ一つの泳ぎ方とかターンとか。一文字の方が上手いと思うし、見習うとこがいっぱいあると思って。」
「えー?そんなことないよ。福田くんだって綺麗な泳ぎしてるよ。」
「いや、俺が目標としてるのは博貴さんみたいな泳ぎ。一文字は似てるんだよ。」
「は?何のことを言ってるの?話が見えないんだけど。」
「あれ、聞いてないの?博貴さん、中学の時、ジュニアオリンピックの選手だったんだ。」
えええ―――っ!!
「……知らなかった。」
「ビデオで見せてもらったんだ。キレのある泳ぎにスゲーて言葉しか出てこなくて、俺はその時高校に入ってすぐだったんだけど、中学生の泳ぎには見えなかった。」