銀杏


「周りからも期待されて頑張ってたらしい。でも高校でいきなり止めちゃって、随分揉めたって聞いた。」

「……」

お兄さんが高校生ということは、ちょうどお母さんが急に辞めた時期と重なる。
もしかしてそれが原因?
お母さんは、一体どれだけの人に迷惑をかけたんだろう。
そこまでして辞めた理由って何?

………。

私がお腹にできたから?

私は……
生まれちゃいけなかったんだろうか……。

嫌だ!
そんなことないよね?

…尊…尊…尊…

今すぐ尊にぎゅっと抱き締めて欲しい。
溢れる不安を止めて。

咲はいらない子じゃないって言って!

「……一文字?どうしたんだよ。え……ち、ちょっと。俺、何か言った?あ…と、う…ご、ごめん。そんな泣くなよ。」

いつの間にか涙がボロボロ零れて止まらなくなった。
福田くんは焦ってあれやこれや言ってくるけど、何も耳に入らない。

福田くんは上着を脱ぐと、バサッと咲の頭から掛けた。




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