銀杏
「…え、おい。咲ちゃん?…泣いてる…?真聖、一体どうしたんだよ。お前、何かしたのか!?」
「や…何もしてない。急に泣き出しちゃって…。なあ、一文字。俺、傷つけるようなこと言ったかな。」
「……」
「何の話したんだよ?」
「いや、大したこと言ってないよ。博貴さんが水泳選手だったって言っただけ…。それがいけなかった?」
「とにかくこんな様子じゃ歩いて帰れないだろ。真聖、咲ちゃん預かるよ。」
「いや、俺が…」
「歩いてるとかえって目立つ。それに彼女は俺を選んだってことだろ。俺が預かる。心配いらないよ。」
貴士は咲に掛けてあった上着を剥ぎ取ると真聖に返し、バイクの後ろに乗せた。
真聖は走り去るバイクをじっと見つめて唇を噛んだ。
くそっ!何だよ。タカさんも一文字狙ってんのか?
……一文字は
誰を選ぶ?