銀杏


「…貴士とはどうやって知り合った?」

「…本当に何も聞いてないんですね。」

真聖を通じて知り合ったことや、今年一緒にスキーに行ったことなんかを話した。

「そうか。母や貴士にとっては、俺はいつも茅の外…か。生まれた時は長男だからと喜んでも、こんな風になってしまっては鬱陶しいだけの存在なのかもな。」

「……それを言うなら、全ての原因は私が生を受けたから…みんなを不幸にした…。」

「……」

「私が…お母さんのお腹にできたから、北条家を突然辞めたの。辞めたからお兄さんは水泳をしなくなった。そして北条家みんなを巻き込んで不幸にしたの。
だから!私なんか…生まれなきゃよかっ…」

これ以上、言葉を続けることはできなかった。
止まっていたはずの涙がどんどん溢れて、嗚咽が博貴の胸に吸い込まれる。




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