銀杏
尊が返事に困っているのを感じる。努めて明るく返した。
「うふ!うっそー。尊ったらしんみりしちゃってぇ。今はおばちゃんもおじちゃんもいるから平気だよーだ。」
「父ちゃんと母ちゃんだけぇ?俺は?」
「尊は煩いからヤダ。」
「何だと。このやろう。」
尊が私の足を蹴ってきた。
「キャー、ごめん。嘘だって。あいた!ストップ、ストップ。…ねえ、手繋いで?小さい時みたいに。」
「どうせ煩いよ俺は。フン!」
「ごめんって。ねえねえ、手繋いで?」
「じゃあ、小指だけ貸してやる。」
「はあ?ケチだなあ。まあいいや。じゃ、私も小指ね。」
まるで約束の指切りをするみたいに小指を絡ませて、また星空を仰いだ。
満天の星が二人を包み込む。
静かに星の光だけが降り注いでいた。