銀杏


「何…やってんだよ…。何で彼女を抱き締めてるんだ!!」

「…北条さん…。」

「…帰ったんじゃなかったのか。」

「兄貴になんて任せられる訳ないだろう!少しばかり仲良くなったからって、割り込んでくるな!……兄貴はいつだってそうだ。」

「…変な言いがかりはよせ。それに言いたいことがあれば帰ってから聞く。先に帰ってろ。彼女送ってくるから。」

「俺が送る。最初からそのつもりだったんだ。」

「そんなカッカして尊くんに会えば余計に熱くなるだろうが。帰れ。社会人の俺が送る方が説得力はあるだろう。」

貴士は言い返す言葉がなくて、奥歯を噛み締めた。

「さ、急ごう。遅くなった。」

貴士のことは気になったものの、いつもと違う様子に一緒にはいたくない。
博貴に促されるまま家に向かった。




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