銀杏
水泳大会に向けて練習も厳しくなって毎日クタクタだった。
ミッチは練習が終わると「言ってくれた?」と訊いてくるけど、まだ言えてない。
できれば大会が終わってからにして欲しい。尊だって試合があるのに。
その日、ミッチはなかなか話をしない咲に痺れを切らしたのか、正門前で待っていた。
「ねえ、話してくれた?」
「あ、…ごめん。まだ。…あの、できれば大会の日に自分で声かけてくれないかな。
たぶん応援に来てくれると思うんだけど。」
「はあ?何それ。
私、ちゃんと頼んだよね?
大会の時にはもうとっくに友だちになってる予定なんだけど。
…咲のこと、友だちだと思ってたのにひたすら待ってた私はバカみたいじゃない。
結局、咲は彼を独り占めしたいだけなんだ。
そうやって友だちですって顔して、心の中では笑ってたんでしょ?
あ~あ、一緒に住んでんだから得だよねー。
今まで彼に近づく女の子みんなガードしてたんじゃないのぉ?」