銀杏
「ここまで来れば聞こえるでしょ。何?」
何気なく見上げると、尊の口元が目の前にある。目線を上に上げていくと、長い睫毛が目に入る。
尊の顔が赤いのは風呂上がりのせい?
突然ぐっと頭を押さえられて、さっきまで見えてた尊の顔はいきなりパジャマに変わった。
「やだ。何で押さえんの?」
ジタジタしながら、「ねえねえ、何て?」と言うと、「忘れた。」なんてほざく。
「そんな嘘、通用しませーん!」
「ハグしてもいい?」
「都合が悪くなるとすぐそうやってはぐらかすんだから。」
プーッと膨れてると、尊は咲の上に覆い被さって抱き締めた後、咲ごとぐるんと反転した。
咲が尊の上に乗っかってる格好だ。
あの~、この体勢ではあまりに密着度が半端ないんですけど…。
尊の腕がしっかりと咲を捉えて離さない。