銀杏


始め、咲の鼓動と尊の鼓動は大きな音を立てていた。でもしばらくじっとしてるとだんだん落ち着いてきて、ふっと尊の腕の力が緩んだ。

尊…?

静かな寝息が聞こえる。

寝ちゃった?
早っ!

そっと尊の腕を退かし、握っていた手を離そうとしたら、またぐっと握られる。

あれ。起きてる?

「尊。ちゃんと布団に入らなきゃ風邪引くよ。起きて。」

「ん~、…わかった。」

眠そうな声でむくっと起き上がると、ボンッという音と共にベッドに倒れ込む。

「え…あの、ちょっと尊!尊の部屋は隣…なんだけど……。」

今度はいくら声をかけてもダメだった。無理やり起こすのも可哀想で、仕方なく真ん中で寝る尊を横目に、ベッドの端に体を滑り込ませた。




…暑い。

蒸し暑さで目が覚めた。

雨の匂いがする。耳をすますと、サアアーと細かい雨粒の音がした。

ああ、雨のせいか。




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