銀杏

優しい言葉に包まれて



7月に入り、博貴に試合に来てほしいと頼みに行った。

水泳の大会なんて断られるかもとドキドキしていたけど、案外すんなりOKしてくれた。

「嫌じゃないの?嫌なことを思い出させることにならない?」

「咲は優しいな。でも大丈夫。気持ちの整理はもう随分前にできてるよ。」

「そう。よかった。
…そういえば最近北条さんは留守が多いですね。ちっとも会わない。」

「あれ、あいつ何も言ってない?しばらく北海道へ行ってるんだ。」

「北海道?旅行?」

「いや。夏休み中には帰って来るよ。後から本人に訊いてみればいい。」

「…そうですか。」

北条さんがどこの大学かとか聞いたことないな。
お兄さんは何の仕事をしてるんだろう。

「…お兄さんはどんな仕事をしているの?」

「…製薬会社だよ。小さなね。」

「へぇ。大変?」

「まあね。それなりに…といったとこかな。」

「ふうん。」

「咲は?将来、何をしたい?」




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