銀杏
将来?まだ何も考えてない。ただ、できればずっと尊の傍にいたい。今考えられることはそれだけ。
「…尊くんの傍にいることか?」
え?
かあ――っと一気に血が上る。
「あはは…わかりやすいな。」
「な…何でわかったの?」
「さあ、何でだろう。」
博貴はそう言うと椅子から立ち上がり、ボードに飾ってある写真を手に取った。
「真っ直ぐで正直。嘘が下手ですぐバレる。…そっくりだよ。」
手にした写真を咲に差し出した。
「これ…お兄さんの彼女かと思ってた。もう何年も会ってないのに、今も大切に飾ってくれてるんですね。」
そこには、はにかんだ表情で照れくさそうにした母。
「…雪乃はお前が看取ったのか?」
咲の顔色が一変した。
「……知ってたの?お母さんが亡くなったこと。」
「…いや、知らない。やっぱりもうこの世には…いなかったか……。」