銀杏
「その日は保育所で尊といっぱい遊んで、園庭の片隅に宝物を隠した日だった。
すごく楽しかった。
尊と一緒に帰ってきて、家の前で別れた。
母は買い忘れた物があると言って、留守番をしててねって近所のお店に出掛けた。
しばらくすると車のブレーキの音と、ドンッという音が聞こえて…怖かった。
そこへ尊のおばちゃんが飛び込んできて…。
気がつくとどこか知らない部屋の中にいて、台の上に白い大きな布。私はパイブ椅子に座ってた。
布を捲るとお母さんが寝てて、『お母さん』と呼んでも返事はなくて…。お母さんの横に一緒に寝ようとしたら、小さなベッドで入れなくて、手を触ったらまるで氷のように冷たかった…。
誰もいない小さな部屋で、さっきまで元気だったお母さんは、まるで人形のように生気がなくて、ひとりぼっちだと悟った。
怖くて…怖くて…誰か助けて!
叫ぼうとしたらそこに尊がやって来て飛びついた。