銀杏


「お兄さんといると不思議。とても安心する。
……あのね、私心配なことがあるの。今は大丈夫なのかどうかわからないんだけど…お兄さんだったら私にどんな言葉を言ってくれるかと思って。」

「どんな心配?」

「一人で家にいられないの。
一人だとわかった途端に息苦しくなって倒れちゃう。
それと事故があったお店の前を通れない。一体、いつまでこんな状態が続くのか…。」

「…そうか。医者じゃないからアドバイスはできないけど、俺なら言い続けるよ。『咲は一人じゃない。みんな必ず家に帰って来る。心配いらない』て。
それと店の前は無理して通らなくていい。住む場所が変わったりすれば済むことだ。」

「でも引っ越しなんて…。」

「だから今すぐでなくていいんだ。結婚とかすれば必然的に変わるだろ?」

そういうことか…。

「何も焦ることはないんだ。時の流れに任せればいい。…もしかしたらもう治ってるのかもしれないな。」




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