銀杏
勝手
あれから尊は毎晩咲の部屋にやって来ては、寝る前に必ずキスをするようになった。
おでこだったり、頬だったり。
ついこの間まで頬にキスするだけで照れて真っ赤になってた。
でも今はそんなこともなく、以前のように慌てて退散する代わりに優しい笑みをくれる。
こんなに幸せでいいのかと思う時がある。
尊は『これからもっと幸せにしてやる』なんて甘い言葉をくれる。
でも確か以前、テニスをしながら女の子と付き合えないって言ってなかった?
「あー、あれ?あれは…あの時はそうだった。」
「ふうん。今は違うの?」
「……さあ?」
「何よ、それ。せっかく幼なじみから昇格したと思ったのに。」
「…でもモチベーションが上がったのは事実だな。」
「ホントに?」
「うん。男はみんな見栄っ張りだから…俺だって咲に格好いいとこ見せたいじゃん。そのためにも頑張んないとって思う。
試合…見に来れんだろ?」