銀杏


「………。」

私のこと?

「…どうして?どうして私のことなんか…。」

貴士はふっ…と笑うと話題を変えた。

「咲ちゃんの将来の夢は何?」

それ、お兄さんにも訊かれた。

お兄さんは尊を大切にしろ、て言ってくれた。
北条さんは何て言うだろう。

「…まだ決まってない。…でも尊の…傍に……」

言葉の途中で貴士は話を取ってしまう。

「決まってないなら一度考えてほしい。俺は咲ちゃんと離れたくない。君の卒業まで待つよ。一年経ったら一緒に暮らさないか?」

どういう意味?
今の言葉はプロポーズにしか聞こえない。

胸がドキドキしてる。
何て答えればいいの?

緊張してきちゃった。

グラスのアイスティーを持つ手が震える。

「…あの、北条さんはいつから私を?」

「さあ、いつだったかな。覚えてないよ。気がつけばいつの間にか…て感じ。」



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