銀杏


「……お、お疲れ…。」

尊、怒ってる?顔が怖いんだけど。

「ここで何してんの?」

「尊を…待ってたの。」

「何で?」

「福田くんが…一緒に帰ろうとついて来るから、逃げてきた。」

「……ふーん。それで?」

「それで…て、尊と一緒に帰りたかったから…。」

「ここはあいつから逃れるための避難所じゃない。」

え……。

「ちゃんと言ったのか?こっちは伝えたつもりでも相手が理解してなきゃ同じだぞ。」

「………。」

言い返す言葉が見つからなくて俯いた。

尊は咲の髪に手を伸ばす。

「お前、この頭でここまで来たの?」

「え?そうだけど…。何かおかしい?」

「ボッサボサ。いつまで経っても変わんないな。櫛は?」

「…持ってない。」

「それぐらい用意しろよ。」

文句を言いながら手櫛で髪をすいてくれる。

目を閉じてじっとしていた。

「随分優しいのね。」

声のした方に目を向けた。

「先輩…。」




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