銀杏
目線の先にはさっきの女の人がいた。
「…先輩だったんだ。さっきね、木の下にいてもいいって門の中に入れてくれたの。」
「へえ。すみません。こいつ、昔日射病になったことがあって。助かりました。」
「あら、大したことはしてないわ。いいわねー、可愛い彼女が迎えに来てくれて。あんまりいじめちゃダメよ?」
「先輩!」
珍しく尊が焦ってる。
「クスクス…。じゃあね。」
尊に軽く手を振って帰って行った。
「…あの人、私服だったけど3年生?」
「いや、大学1年。今年卒業した先輩。夏休みだから覗きに来たんだってさ。」
「ふうん。あ、後ろ乗せて。」
「何でだよ?お前、重いからやだ。」
「失礼しちゃう!尊より軽いよ!!」
自転車置場で押し問答が始まった。
「それにクラブの後、ここまで歩いて来たんだろ?後ろに乗ったら絶対寝るからダメ。あ、俺が後ろならいいよ。」