銀杏
尊の背中が心地いい。胸の鼓動を聞きながらうとうとしだした。
今日も疲れた。待ってた分、余計に疲れたかも。
………
「おい、咲。交代。降りろ。」
「………。」
「いつまで乗って……」
振り返ると咲は眠っていて、尊はため息を吐いた。
「……マジかよ。」
道理で腕の力は抜けるし、頭がフラフラする訳だ。
はあ…。
結局俺がこぐのかよ。
安心しきって寝てんのか?
起こすのも可哀想か。
目が覚めたら仕返ししてやる。
ふっ…と笑いが溢れた。
「咲、咲……。」
「う…ん…。」
揺さぶらて気がついた。
「…ここどこ?」
「はあ?まだ寝ぼけてんの。家に着いた。」
「…家?だって交代…。」
「んじゃ、今から走ってこいよ。一人で。」
「え?…あ、家?何で…交代…。」
「人の背中でぐうぐう寝やがって。俺ずーっとお前乗せて走ったの。わかってる?疲れた体にムチ打って帰って来たの。」