銀杏
「違う。」
そう言うと咲の背後に回った。
あ?肩揉んでくれるの?
期待してたのに咲の両肩から腕をだらんと垂らして、ずっしりともたれてきた。
「あの…ちょっと!重いんだけど。」
だらんと垂らした腕を組んで抱き締められた。
ドクン…
抱き締められることにまだ慣れない。今までのハグとは違う、恋人としてのハグ。ピクンと肩が上がって急に鼓動が早くなる。
耳のところに尊の頬が当たって、ぎゅっと密着した。
「た…尊。肩揉んでくれるんじゃないの…?」
やっとの思いで言葉を発したのに、尊は平然と「うん。」と答える。
「えー?今、マッサージしてやるって言ったじゃない。」
「うん。気が変わった。」
「やだー!やってよ。期待したんだから。」
「何で俺がお前にサービスすんだよ?」
「……だって。」
さっきから早鐘のように鳴る胸の音を誤魔化すために騒いでたのに、尊は―――