銀杏


もうすぐ順番が回ってくる。中学の時も来てるのにやっぱり緊張する。何回やっても慣れないな…。

何気なく上を見た。
お兄さんを見つけた。
手をほんの少しだけ挙げて合図してくれる。
姿を見てほっとした。

通路の方に目を移すとー――

………。

あれ?あの隅っこのとこで見え隠れしてるのは…

尊?

来てくれたんだ。でも何であんなとこにいるんだろ。椅子に座ればいいのに。

クラブの連中に視線を移した。
みんなの声援が聞こえる。その中にミッチはいない。

どこ?

左へ目線を移動した。
ミッチはみんなから少し離れ、一点を見つめ、まっすぐその方向へ歩を進める。
それはさっき尊の姿を見た辺り。

尊を見つけたの?

ここからでは尊を確認することはできなかった。



深呼吸して落ち着かせる。
ただ水面を見つめ、耳をすます。
スタートの合図が響き渡った。




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