銀杏


咲の顧問をしている田中透(タナカ トオル)はスイミングスクールが同じだった。
幼稚園の頃から選手育成コースに通って、友だちであり、いいライバルだった。

中学生の時、スクールを終えて出ようとしたら凄い雨で、透と話しながら小雨になるのを待っていた。
しばらくするとずぶ濡れの雪乃がやって来た。

レインコートやレインシューズは全く役に立たず、頭から水を被ったように水滴が滴っている。
俺は思わず駆け寄って、「何でこんな雨の中来るんだよ!」て言ったんだ。
すると彼女はすまなそうな顔をして、「博貴、傘持って行かなかったから…。」言い訳をするように呟いた。

「お前の姉さん?」

透の言葉にお手伝いさんだとも初恋の人だとも言い難くて誤魔化した。

「姉さんじゃないけど…。」

「ふーん。じゃあ何?お前の年上彼女?」

「ばっ…ばか!そんなんじゃねーよ!!行こ、雪乃。」

俺の雪乃に対する気持ちを言い当てられた気分で、それが恥ずかしくてそこから逃げるように走って帰った。




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