銀杏
迎えたテニスの試合。
今日も暑い。蒸し暑さが加わって、更に蝉の鳴き声。じわじわと滲む汗。
帽子に団扇、タオルに水筒、保冷剤と準備万端!
尊には見せられない、こんな荷物。どこに遊びに行くんだ?と言われてしまいそう。
でも今度は日射病で倒れる訳にはいかない。自分の健康管理のため、と開き直って家を出た。
今日の試合は予選を勝ち抜いた人たちの本選。これに勝てば全国大会だ。
会場に向かう電車の中、何人かの女の子たちの会話が聞こえてきた。
「天宮くんてクールだよね。」
え?尊のこと?
「あ~そうそう。この間もね、クラスの女子が声かけても殆ど無視。返事ぐらいしてもいいじゃない?」
そうだよね。
「女嫌いって聞いたことあるよ。」
ふーん、そうなんだ。
「えー!?そうなの?あんなに格好いいのにもったいない。」
そんなに格好いいかなあ?
「私は彼女がいるって聞いたよ?」
えへ!何か恥ずかしいな。
「ホント!?誰、誰?」
私なんだけど…。