銀杏


「雪乃さんの居場所…教えてくれないか。どこに住んでる?」

こいつ…どこまで本心だ?
昔から口先だけの奴だと思ってたけど。

「プールで会った時、俺の他に誰がいたのか覚えてるか?」

「…へ?お前と一文字と高校生ぐらいの男がいたよな。」

「他には?」

「さあ、覚えてねえな。」

「…天宮さんだよ。」

「天宮?…て、え?あの…あの天宮さん?」

「そうだよ。水泳で日本記録を出した天宮さんだ。」

「まさか…ええ~!気がつかなかった…。あちゃー、挨拶も何もしなかったよ。」

透は頭を抱えた。

「天宮さん、何か言ってた?」

「昔からああいう奴だ…て。
咲は天宮さんとこで世話になってるんだ。だから彼に泳ぎを教わって同じ泳ぎ方なんだ。」

「へえ、そうだったのか。道理で…。
お前、何でそんなに詳しいの?
第一、一文字が何で天宮さんとこで世話になるんだよ?親がいるだろ?」




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